「中核市奈良21研究会」時局講演会10月例会 |
世界遺産のある奈良、発展の方途を探る中核市奈良21研究会(森ちふく会長、奈良市民新聞社内)は10月例会を10月26日(火)奈良市法華寺町の奈良ロイヤルホテルで、多数の方々の参加を得て開催しました。
今回は講師として、奈良ロイヤルホテル八坂豊代表取締役社長を迎え、来年以降の経済活性化をはかる上において、中小企業のあり方を講演していただきました。 |
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― 中小企業の役割 ―
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八 坂 豊 氏
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私は、まだ経営者としては5年ですが中小企業の経営者の立場でいろんなことを体験させていただき、経営というものに対してどのように取り組めばよいのかと考えた時、私たち一社だけが良くなるということは有り得ないのだということを痛感しています。
まず、ここに来て感じたことは東京ベースの会社の価値観と地方の会社の価値観には大きな差があるということです。利益最優先というのがインターナショナルでスタンダードな企業の価値観であるのに対し、「ここで一生を過ごしたい」という従業員の方々の熱い思いが中小企業の役割の大きな部分を占めているようです。私たちが所属している中小企業家同友会では2003年より「中小企業憲章」の制定運動を展開してきましたが今回、民主党の皆さんがこの事に着手し、6月に閣議決定しました。ポイントとしては中小企業の歴史的な位置づけや今日の中小企業の経済的、社会的役割等についての考え方と基本理念として示すと共に中小企業政策に取り組むにあたっての基本原則や、それを踏まえて政府として進める中小企業政策の行動指針を示した。特にわが国では少子化、高齢化、経済社会の停滞等、将来への不安が増している中、不安解消のカギとなる医療福祉等の分野で変革の担い手である中小企業が力を発揮することで、わが国の新しい将来像が描けるとの中小企業への新しい見方を提案しています。
2000年に出来たヨーロッパの小企業憲章では小企業はヨーロッパの経済の背骨である。雇用の主な源泉でありビジネスアイデアを産み育てる大地だという表現をしています。日本における「中小企業憲章」は、まさしく地域の振興ということを考えた条例だと思っています。
ところで、奈良の就業率は男性65.7%(全国32位)、女性39.5%(全国47位)と非常に低く、男性でいうと全体の29.3%が県外、すなわち大阪に職を求めて働いています。その子どもたちもまた、その可能性は大きいですが、それが可能かということが問題になってきます。私どもの従業員のように奈良で生まれ、奈良で育ち、奈良で学んで、奈良で働き一生を過ごしたいと思っている人たちは大勢います。その人たちが奈良を支えて行く人たちだと思います。この部分をどうやって我々がお手伝い出来るのか、それが中小企業の役割だと思います。しかしそれは中小企業の問題だけではなく、根本はこの地域というものをどうして行くかという話です。地域の皆さんが一緒になって、この地域の将来を考える時が来たのではないかと思います。
また、企業の役割はどれだけ納税するかということ以上に、何人の人を雇用出来るかということが存在価値の判断基準だと思います。ここで必要になって来るのは人材ですが、私たち中小企業が地域の子どもたちに、仕事とは何かということをしっかり伝えること、そしてこの地域が良くなる為には何が必要かということを語っていくことが必要だと思います。私どもの職場では理念学習会ということを行っていますが、アルバイトの学生に「会社とは何の為にあるか」という話をする時、私たちが稼ぎ出すお金は他の人の雇用まで守っているのだという話をすると、とても喜んでくれます。元気な地域とは地域の中でたくさんのお金が回ること、地域の循環がもっと出来ればすばらしい地域になるということを伝えています。奈良は県民所得が全国28位なのに個人預金率が全国4位ということで、お金持ちが多い県だということが分かります。それによって何かおこるかというと、いざということがあっても生活出来る人が多い為、仕事をしなくてもいいということに繋がってしまいます。これは一つの危機であると考えます。そうなると地域からどんどん仕事場が無くなってしまいます。このことを奈良は本当に考えなくてはならない時期だと思います。この先、多くの外国人が奈良に来ることは間違いありません。そういった中で私たち中小企業が連携して、この奈良に何か売れる物を作っていくことが必要です。そのためには商店街の皆さんとも連携しなくてはなりません。また一次産業の農業ですが、奈良の産物をどうやってこの県内の中で皆さんに喜んで使っていただくのか、このことを真剣に考えなくてならない。やはり連携が絶対に必要です。観光についても同じです。私はここに来てからずっと言い続けているのですが、奈良で一元化した組織を作り、あらゆる情報がそこに一回入り、あらゆる情報がそこを通して外に発信されるというようなことがあれば奈良の皆さんの素晴らしい活動が本当の推進力になる。国の憲章ができ、県の条例がある、次は各市の市長さんに地域の振興条例を作りましょうという投げかけをさせて頂き、一緒になって地域の将来を考えていきたいと提案をさせていただいています。今、奈良は雇用と消費と投資の3つが地域の中で回っていくことを考える時に来ています。そして、その役割を背負っているのが中小企業だと思っています。
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