「中核市奈良21研究会」シンポジウム(5月例会) |
― 平城遷都1300年祭記念イベントと奈良観光戦略 ―
奈良の現在と未来を考える、奈良市民新聞社主催「中核市奈良21研究会」5月例会が、会員多数の参加を得て5月28日に、奈良市法華寺町の奈良ロイヤルホテルで開催した。
今回は、月亭可朝(落語家・タレント)氏をお迎えして「奈良観光をイメージする」と題して基調講演をしていただきパネルディスカッションは「近鉄・JR奈良駅周辺商店街の活性化」について、パネリスト・コーディネータの方々に活発に議論していただきました。
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第1部 基調講演 |
― 「奈良観光をイメージする」 ―
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月亭可朝さん 「落語家・タレント」
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昔は山の辺の道もよく歩いたものです。今は改修、復元されていますが、朽ち果てかけたお寺も多くありました。観光もそういう方向のPRが多かったし今もそうです。「奈良の古き良き時代の歴史に浸りませんか」といったポスターが九州に行っても関東に行っても駅に貼られています。確かに歴史においてはどこにもひけをとらないものが奈良にはたくさん有ります。ある人は、「それは奈良の宝物だ」と言いますが、その前にもっと思わなければいけないのは、あの建造物、古い遺跡などを維持したり復元したりすることは大変な努力の上に成り立っているということです。そういう努力があって、今の奈良の遺跡が存在するということを考えなくてはなりません。パリやローマも古都に違いないが奈良は土も有り、草も有り、木も有る本当の古都といえます。観光客は「私を変えてくれる未来がそこにあるのではないか」と、未来と期待と夢を持っています。しかし奈良のPRには過去は有るが未来が無い。過去の良いものをいっぱい持っている奈良が未来に夢と期待をもたらすことがPRです。パリやローマ、そして韓国のように何か恋を予感出来るような演出が必要だと思います。
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第2部 パネルディスカッション |
― 「近鉄・JR奈良駅周辺商店街の活性化への課題」 ―
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<パネリスト>
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木野本勝さん
[奈良市中心市街地活性化協議会事務局長]
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新堂順規さん
[商店街振興組合三条通ショッピングモール専務理事]
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魚谷和良さん
[奈良もちいどのセンター街協同組合専務理事]
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天川千穂さん
[日本易学連合会会員 日本占術協会会員師範鑑定士]
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<コーディネータ>
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遠藤秀樹さん
[奈良県立大学地域創造学部教授]
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遠藤 今回は「近鉄・JR奈良駅周辺商店街の活性化への課題」ということで中心市街地の活性化に取り組むパネリストの皆さんをお招きしていろんなご意見をお聞きかせ下さい。
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木野本 平成16年、イオングループの進出に伴いJR・近鉄奈良駅周辺の8商店街の人々が奈良市市街地活性化研究会を立ち上げ、中心市街地の活性化に頑張って行こうということで、発足しました。その後、奈良市中心市街地活性化政策委員会というのを立ち上げ基本計画の策定にかかりました。平成20年3月、その基本計画が国に認定されました。活性化の目標に掲げたのは「訪れたくなる街、歩きたくなる街、活力のある街」ということで今、頑張っているところです。昨年はもちいどの商店街が経済産業省の「新・頑張る商店街77選」に選ばれました。
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遠藤 中心市街地の大きな課題を頂いたので、そういった大きな枠組みの中でどういった取り組みをされているのですか。
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魚谷 平成16年に研究会を発足して頂いた頃、もちいどの商店街は空き店舗が10数店舗もあり、放っておくと危ない状況で、更に中央にあったパチンコ店の廃業でどうしようかということになり先生方にも知恵を借りながら、その土地を買い取り、「もちいどの夢キューブ」といって若い企業家の人達にチャンスを持ってもらいその人達と共に商店街を活性化に結びつけて行こうということで国の補助、奈良市のご協力、補助を頂きながら2007年に完成しました。全国40社の応募がありました。また2008年にはオーケストというテナントミックス事業がうまくオープンし、歯車が良い方に回り出しました。中心市街地活性化研究会が出来てから、となり同士、協力し合って一緒に取り組んで、前向きに進み出したように思います。
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新堂 JRからやすらぎの道の交差点までを三条通りショッピングモールといいます。かつては旅館が多く有り、修学旅行の生徒でにぎわったものです。昭和40年代に関西線の電化と同時にダイエー奈良店ができ、お買物の街になりました。昭和60年代にはシルクロード博が開催されてコミュニティー道路となりました。三条通りは春日大社の参道でもあり、春日若宮おん祭りも意識した道幅を維持しながらシンボルロードとなるように現在、工事が進められています。皆に愛されながらも交通事故で死んだ「鹿の白ちゃん」をシンボルマスコットにどうかといった案も出ています。
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遠藤 中心市街地の消費者としての立場から、どのような問題点があると感じておられますか。
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天川 奈良の商店街は汚い、活気がない、暗いといったイメージがあります。もっと活気のある街にしてほしいというのが私の願いです。旅行客がホテルで食事をしてぶらぶらしようと思った時に店が閉まっている。街全体で活気のある面白い街づくりを考えて欲しいです。
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魚谷 ゴミを無くすのは不可能なのできれいにしていこうという取り組みはしています。夜については毎年行われる正倉院展の時に美しいもの、美味しいもののスタンプラリーをしていますが、夜も楽しいところがありますよということで夜のスタンプラリーも計画中です。
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新堂 JR付近より飲食店が増えてきています。夜遅くまで食事が出来る店も増えていて増え過ぎを懸念する思いも多少あります。ゴミについてはカラスの被害が有り、熱湯をかけて防止したり、業者と契約して収集の時間を考慮したりしている店もあります。街の中を歩いて頂いて、それが同時に観光となり収入となることを目標に努力しています。
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木野本 協議会も研究会と手をたずさえていろんなイベント事業をしています。街中1300年祭において5月22日〜30日の九日間、猿沢池におきまして采女祭の時に使われる龍頭船に乗って頂くという趣向でやっております。また、みこしやパレード、三条通りではマルシェ等で楽しんで頂いております。
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魚谷 龍頭船には采女祭りの時の衣装を着て遊覧して頂くのですが、船に乗りますと、まったく空気が違っていて興福寺の景色も格別のものとなります。協力金だけで乗って頂くことが出来ますので、是非この機会に体験して頂きたい。三条通り添いのヨーロッパ広場、シルクロード広場、そして興福寺の前は平城広場ということで各種パフォーマンスを行っています。まちなか1300年祭の最後を飾ろうということで今、八つの商店街が中心となって取り組んでいます。
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新堂 ヨーロッパ広場は奈良銀行の本店があった所です。ここではヨーロッパ風の飲食店やステージを作って賑やかにやっています。周辺にも空いている土地があるので再開発出来れば生き返るように考えます。業務施設の後はなかなか利用が難しいということがネックになっています。 |
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遠藤 木野本さん、最初に街中1300年祭のお話に振って頂いたのですが、付け加えることがありますか。
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木野本 JR奈良駅前のホテル建設が中止になったり、なかなか計画通りには行っていない部分もありますが、大きな事業に対して国から出る補助金を利用して何とか中心市街地の事業を進めて行きたい。三条通りの物件も補助金によって何とかならないものかと検討しています。
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天川 奈良のイベントについてはいつもボランティアをしている方からの情報がほとんどなので、もう少しPRを上手に生かしてやって頂ければもっともっといろんな人が来られるように思います。地元よりも地方のPRの方が徹底しているように見受けられます。
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新堂 実際の通り地元でのPRは奈良シルクロード博の時の印象と比べると地味といえるかも知れません。ですが、これだけのものを守り育てて来たすばらしさ、魅力をアピールして行くことの基礎を作るのが1300年祭と考えます。また、奈良に宿泊してもらうには奈良の南の方の吉野、葛城、明日香の魅力も訴えて行く必要があるように思います。
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魚谷 ならまちの魅力は何なのかを考えた時、アンケートによると「ゆっくりしたい、ほっとしたい、おちつきたい」ということを求めて来ている人が多いということが分かりました。イベントで疲れた人がならまちに来てレトロ感、癒し感を感じる、そういった魅力を1300年祭の後に発信して行けば良いのではないでしょうか。
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木野本 天川さんのおっしゃっていることは以前からの課題です。ゴミを無くす対策、調査研究もやろうとしています。
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遠藤 ポスト1300年祭ということで今後の奈良をどのようにお考えですか?
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木野本 一過性のものにしてはいけないと思います。現在、非常に多くの観光客の皆さんに来て頂いているので、これをチャンスに他にもある奈良の魅力を知って頂き、我々も努力を怠ることなく活性化に努めていきたい。
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新堂 1300年祭でJRの線路が上に上がり、東と西の分断が無くなったということは大きな成果ではないでしょうか。これをどう生かして行けるかを考えるのが課題です。
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遠藤 遷都1300年祭によって開かれた西からの動線をどのように活用するかということですね。
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魚谷 2010年より後に何を残せるかと考えた時に、これだけ全国から発信して頂き、訪れて頂いているので、奈良のすばらしさをまず奈良の人が理解してもっと地元一体感というものがしっかり出来ていけば、平城遷都1300年祭は非常に意義のあるものになるように考えます。
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天川 平城遷都1300年祭はすばらしいと思いますが、座るところが無い、アクセスが悪い、身障者への気配りが足りない等、全体的に段取りが悪いように思いました。南の方へ行くアクセスも改善し、奈良の活性化に繋げて行ってほしいです。
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遠藤 共通の言葉として繋がりということを何人かの方がおっしゃっているように思います。
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新堂 これからの奈良は観光というものを大きな柱に立てていかなくてはならない。その一番大きな受け皿というのは中心市街地だと思います。ここにどれだけ観光客に来て頂けるかが、これから先の奈良の大きな課題になるのではないでしょうか。
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魚谷 2011年以降、観光や街づくりを考える時に行政、地域住民、教育関係だけではない新しい視線で街をリードして行くような組織や集まりが必要になって来るように思います。中心市街地活性化研究会の中でもまちづくり会社の設立ということで今、準備、研究し、課題としていますが、こういった新しい組織が新しい観点で奈良の街を少しでも前へ進めて行ける一つのアクションになるように考えます。
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遠藤 ポスト1300年祭以降、我々は賑わいということ以上に観光ということも含めてまちづくりに取り組んでいく必要があるような気がします。
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