Vol.75  
不祥事続出の近鉄グループ。
伝統的(?)がめつさ第一主義が
一挙に露呈!!
〜公共企業精神ゼロ。
独占資本グループのエゴに 食い荒らされる奈良・三重県〜
奈良・三重両県を主なエリアとする近畿日本鉄道はこの9月に創業100年の 節目を迎えるが、ここにきてそのグループ内で不祥事が相次ぎ、遂には親会社の 近鉄本社自身が投資家に注意喚起を促す「管理銘柄」に指定されるという屈辱に もまみれた。小紙がこれまで幾度となく指摘・批判してきた同グループ特有の公 共企業としての自覚無き我利我利亡者的企業姿勢が一挙に露呈した格好だ。生活 上、同グループを利用せざるを得ない奈良・三重両県民は彼らの営業姿勢を一層 厳しく監視する必要性のあることを力説しておきたい。

儲け至上・社員薄給・上意下達三主義の当然の結果
 実際、近鉄グループ内の不祥事続出は昨秋以来、今日に到るまで枚挙にいとまない。
 主なものだけでも、ビル清掃・管理の「近鉄ビルサービス」の経理担当者が多 年にわたって運転資金10億円を着服したのを皮切りに、広告・内装の「メデイ アアート」が累積額64億円という巨額架空売り上げの不正経理を実施。さらに は近鉄百貨店の外商マンが顧客のカードを不正利用するといったシーンが一部の テレビで放映されるなど。
 一方、これ以外のグループ内子会社でも巨大赤字による業務の大幅縮小や社員 の大量リストラ、顧客名簿の外部流出や各種トラブルの増加などが頻発。いかに も独占企業にふさわしく、昔から「資産株」[安定株]とされる近鉄の株主を痛 く嘆かせているのが現状だ。
 そして、子は親を見て育つとはよく言ったもので、これら不祥事続出の子会社 内の底流を流れる共通項が、親会社近鉄伝統の儲け第一・社員薄給・上意下達の 三主義にあると見るのは関係者の一致したところだ。
 たとえばメデイアアートの件で記者会見した近鉄本社の小林哲也社長が「本社 から派遣された社長が故意に強権を持って不正に手を染め、それをだれも止めら れなかったことが一番のショック」と述べているように、天下り社長によるワン マン体制、押し並べて業界最低の低賃金(例えば近鉄ビルサービスや近鉄観光の パート社員の時給は今でも750円前後の法定賃金すれすれがほとんど)など、 公共の哲学無視の何しろまず儲け第一というのが不祥事続出の底流にあるのはほ ぼ間違いない。
 言ってみれば、これまでなんとか押さえ付けてきた近鉄グループという企業体 質の諸矛盾の多年にわたる蓄積が、遂にここに来て一挙に噴出・露呈した格好な のだ。

奈良県が今年度、奈良交通に3億4500万の助成金を
支出。 全国初のケース。はて?

 ところで最近でも、その近鉄グループの有力な子会社の1つ、奈良交通に対する奈良県の多額に渡る助成金支出の決定が関係業界の話題を呼んでいる。なんで も全国初のケースとかで、一部には「なぜ奈良交通だけに?」という疑問符を呈 する向きもあるのは事実だ。
 県の説明によると、奈良交通への助成として100万円を含めて10年度中に 関連費用計3億4500万円を支出する。今年度は国庫補助要件を満たさない7 路線に対して県が収支の一部を補填して国庫補助の対象に格上げするという。
 県の更なる説明によると、奈良交通は現在、県内で160路線を運行している が、うち約7割までが赤字といい、このため昨年末に12年ぶりに運賃を値上げ したが、それでは追いつかずに県の助成が必要なのだと言う。都道府県単位によ るそれは奈良県が初と言う。
 しかし、地方バス路線が赤字なのは今では全国共通で、このため国の助成制度 があるのだが、奈良交通は赤字と言っても昔から超独占バス会社としてのその高運賃ぶりは全国的にも定評があるし、またリストラ策も聞いた事がなく、さらにはいわゆるコミ ニュテイバスの運行では地元市町村の相応の援助を得ているはずだ。一方で県内 のタクシー業界では近鉄タクシーがほぼ100%独占。近畿でもまれな高運賃で 1人稼ぎまくっている事実がある。
 今回の県の助成決定も含めて、何よりも不審なのは、この奈良交通の赤字及び それに対する助成にしても、県や市町村が鵜呑みにしてこれまで1度として詳細 に審議したことがないという点だ。また県や市町村議会で質問が1度もないこと も共通している。

近鉄商法こそ、平成の世に生きる大仏商法
 遷都祭たけなわの今、デフレ下とは言え、遠来のお客様たちが一様に驚くのが古都の電車・バス・タクシー・飲食・宿泊・観光料金の高さと、それに逆比例し てのサービス精神の低さだ。そしてその究極的遠因は、近鉄を親としてのそのグ ループの伝統的体質、公共的精神皆無の儲け至上主義・社員薄給主義にある。い わゆる平成の今も古都に健在する「近鉄商法」と言う名の「大仏商法」がそれだ
 開かずの踏み切りを100年放置する厚顔さ、運賃2倍の特急優先のダイヤ、 これでもかと押し込んだ駅構内の出店群、自治体の都市計画・再整備事業に対す る見事なまでの非協力性、業界最低の薄給、近鉄一家を悪用しての不動産事業で のぼろもうけ。貸し自転車、貸しボックスなんでも世間より3割高、奈良観光バ スの車掌さんの質の低いこと、雨が降っても雨傘用のビニールも置きません。で もトイレットぺーパーだけは某県議の厳しい非難で1昨年置きましたーー。
 そんな近鉄グループに支配され、牛耳られた奈良県で、見ない・聞かない・言 わないの三猿主義にどっぷりと浸りきった、有識者や審議会委員といったたぐい の通り一遍の八方美人的論評やらにしたがっている限り奈良県の経済発展や観光 の活性化は土台無理ということを知らねばならない。
  遷都祭の終わった後、奈良県経済や観光は元の木阿弥。儲けるのは再び近鉄 グループだけ?