速報
奈良市議会平成24年3月定例会

市町村議会の3月定例会は、そのメインの議題が翌年度の予算案である。
 その予算案は、「入るを量りて、出るを制する。=量入制出」という原則で作成される。景気動向、為替相場、人口推移などから、できるだけ細密な税収を始めとする収入を見積もり、基本的にはその収入の範囲内で支出を決定しようというものである。
 しかし、ことはそのようにうまくは運ばない。人件費や扶助費といった削減できない義務的な経費が支出全体に重くのしかかる。家計も同じことであるが、収入が支出を下回ることになれば、その不足分は、借金で埋め合わせすることになる。奈良市の場合、その累積総額が平成24年3月末見込みで2,614億5,747万円という。1年度の予算額を大きく上回る額であり、市民一人当たりに換算すると、実に約71万3千円の借金である。当然ながら、市長を始めとする執行部は、支出の切り詰めと市民サービスの向上という二律背反のテーマに呻吟しながら、結論を出さざるを得ないのである。そうすると議会(議員)は、どうであろうか。予算に関して、議会(議員)には議決権しかなく、いわゆる執行権がないから支出の切り詰めのための手段を持たない。議決権として、間接的に係わることができるだけなのである。これを隔靴掻痒(かっかそうよう=足の裏が水虫でかゆいのに靴のそこからしか掻けない。)という。議会(議員)の宿命といわなければならない。非常に分かり難いが、簡単に言うと市長をトップとする執行部(執行機関)では、勤務時間中は職務に専念して、密度の濃い仕事をし、残業時間を減らして、残業手当を削減しようとか、パソコン処理を適正に行ないプリントアウトする用紙を節約する、といった類である。ただし、議会(議員)はそれができない。否、ただ一つだけできることがある。それは、身を削ることである。それが議員報酬の削減である。奈良市議会では、昨年6月に議会制度検討特別委員会を設置して議会制度全般にわたって検討を加えてきた。その端緒に議員報酬と議員定数の見直しを上げた議員もいたが、大半の議員(市長与党議員たち)は、それに同調することなく、結局、1年度間の時限措置であった報酬10パーセントカットの期限が切れる先の3月議会まで放置しておいて、あわてて10パーセントカットの継続を決めたのである。この審議の中で市長野党議員側からは、時限措置ではなく恒久的に、しかも、30パーセントをカットしようとする提案がなされたが通らなかった。10パーセントの継続とは、いかにも、仕方なしのおざなりな結論ではないか。考えても見よ、なぜ、議員報酬をカットするのか。市長以下の執行部が先に書いた膨大な赤字に苦しんでいるのを少しでも助けてやろうとして、議会ができるただ一つの方法を実行するにあたって、市長与党たる議員が数にまかせて、10パーセントの結論を出したのである。困っている市長を助けるのなら、市長与党は30パーセントの結論を選ぶのが筋ではないのか。市長もこんな議員連中を与党と考えていたら何をされるか分からないことを肝に銘じておかなければならないだろう。それとも、与党議員が30パーセントの結論を出したら自分の給与カットも大幅にしなければならなくなると勘繰って、上原議長か土田議員あたりに30パーセントは止めて欲しいと懇願でもしたものか。さて、この歳費カット劇の中で、是非、読者諸賢に報告しておかなければならないことがある。それは、横井議員のこの問題への対応のしかたである。横井議員は、奈良交通の管理職職員であり、同社の給与があるから、30パーセントカットに賛成の立場をとっていた。ところが、採決では、10パーセントカットに賛成したのである。小紙は、これまで紙面に構成はしなかったが、奈良市と奈良交通との関係を疑問視してきた。今後も引き続き注意を払いたい。さて、奈良市の予算議会が進む中、管理職である担当職員による税の横領事件や不法な不納欠損処分の実態を明らかにするために、いわゆる100条委員会の設置が提案されたが、これも、市長与党議員が中心になって、その設置を先に延ばしている。議員報酬を10パーセントカットしたところで、予算全体からみれば、微々たるものである。そうすると何千万円もの税横領や何億円もの不法な不納欠損は、その実態を解明して当然のことであるのに、与党議員は、なぜ反応しないのか。税の二件は、市長を責めることになるので、与党議員の腰が重いのもうなずける。このような議会の積極性のなさを達見してか、監査委員に対して、不法な不納欠損を監査して、市長に損害賠償を求めた住民監査請求が同じく3月議会の会期中に相次いで2件、監査委員に提出された。監査委員も市長から任命されるから、住民監査請求が棄却される場合が多い(奈良市だけではない、全国的に)。しかし、不納欠損については、監査委員も既にその不当性を指摘しているのであるから、よもや、この2件の住民監査請求が棄却されるとは考えにくい。この監査請求は,4月2日に正式に受理され、間もなく審査が始まる。それにしても、先ごろ奈良市に対して1億円の寄付をした奇特な御仁もおられたが、市長与党議員が報酬カットといい税横領といい、はたまた、不法な不納欠損といい、消極的な対応で市長を守ろうとしている。これらをご存知で1億円もの寄付をされたのだろうか。